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富山県における単位履修不足問題のまとめ 単位履修不足問題は、二種類あるらしい。少なくとも富山県では。
履修漏れ問題と、AB代替問題に分けられるまず、少なくとも富山県における履修問題は、二種類に分けられる。 ひとつは、高岡南高校に端を発して全国にも波及した、「世界史などの特定科目ををまったくやってない」という問題。これは単位の取得という点で弁解の余地はないだろう。 もうひとつは、県下十数校で発覚した、「本来は世界史Aを習うはずの生徒に、代わりに世界史Bの授業を受けさせた」という問題。これは教員不足や時間割の自由度不足を理由に、世界史Aを習わせるべき生徒を、世界史Bの生徒らといっしょに授業したというもの。Bの科目はAの科目よりも高度な内容であるため、Bを習ったことでAの単位も認めてもらいたいというのが学校側の言い分だが、本来、世界史Bは2年生と3年生の2年間、世界史Aは2年生の1年間で終えるものであり、2年生の1年間を世界史Bの授業で過ごした世界史Aの生徒は、人類の歴史を網羅しないままに卒業することになる。文科省の回答待ちだが、これも黒に近いと言える。 全国的に問題となっているのは、前者の未履修問題全国の状況として、前者の未履修問題は、都道府県によって偏りはあるものの、トップクラスの進学校を含めて多くが該当している。しかし富山県では、高岡南のほか少なくとも5校が該当するようだが、御三家などトップクラスの進学校は該当しない。1999年春に卒業したわたし自身も、富山高校で世界史Aを1年間しっかり学んだので、間違いない。 いっぽう、後者のAB代替問題は、いまのところ富山県だけの問題であるようだ。しかし富山高校も含めて御三家は揃って該当するほか、県内で10数校が該当する。他県でも今後問題が浮上する可能性が高い。ただし、先に述べたようにわたしの時代は世界史Aの授業は正しく世界史Aとしておこなわれており、こうしたAB合同授業が取り入れられるようになったのは、おそらく週休二日制の導入やゆとり教育世代以降の措置だったのではないかと考えられる。 受験対策の履修漏れ問題と、教員不足のAB代替問題は別物ただし、いずれも単位の取得の問題という点では同じであるが、動機という点ではまったく別物である。 「世界史をまったくやらない」高校は、その分の時間をまるまる他の受験科目に振り向けることが目的であり、まさに受験対策のための措置だ。しかし「世界史Aの生徒にBの授業を受けさせる」高校は、どのみち世界史が受験科目でない世界史Aの生徒にとって、得なことは何もない。むしろ、人類の歴史を前半しか習えないのだから、損していると言ってもいい。もちろん世界史Bの生徒にとっても、2年生の時にAの生徒が混じるからといって、得にはならない。得するのは、あくまで教員の配置や時間割の作成が楽になる学校のマネジメント側だけだ。 なぜ「いま」なのか?しかしこうした「単位の操作」がこれだけ全国に普及しているということは、現場ではごく当然のようにおこなわれていたに違いない。生の声が知りたくて東北地方某県の現役の教員さんに聞いてみたが、「なにを今更」というのがホンネだそうだ。さもありなん。 わたしが気になるのは、なぜこの問題を、この時期に、高岡南高校で明るみにする必要があったのかということだ。正義感に燃えたであろう告発者X氏が取るべきだった行動は、受験も終わった4月上旬、文科省の担当者に内々に連絡を取り、「翌年からカリキュラムは学習指導要領に正しく沿うように厳しくチェックするから、各県教委はこれまでの悪しき慣習を改めるように」という通達を出してもらうように直訴することだろう。その上で仮に文科省が拒めば、「実態をマスコミに公表するぞ」と脅せばよいのだ。そうすれば、X氏の目的は平和的に達成されるであろう。 今回実際にX氏が取った行動は、わたしに言わせれば無思慮と断ずるほかない。思慮の無さから逆に考えれば、告発のきっかけは正義感ではなく、怨恨など些細なことであった可能性もあり、そうであればX氏は、これが全国の進学校を揺るがすことになるとは思ってもみなかっただろう。 もちろん、もういっぽうでは、単位を操作してきた高校側ではなく、実態にそぐわない学習指導要領のほうをこそ改めるべきであるという指摘もある。しかしそれを推し進めるY氏の目的達成は、一筋縄ではいきそうにない。これが問題だ。 参考 : 高岡南高校ほか、「やってない」高校に下される沙汰の可能性
参考 : 富山高校ほか、「AとBをまとめた」高校に下される沙汰の可能性(以下「世界史A」選択者を例に挙げるが、「地理A」ほかの選択者も同様)
参考リンク
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