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フリーターを見る社会の目

 わたしたちは、一方でフリーターはけしからんといいながら、実は大いにフリーターの恩恵にあずかっているのかもしれません。

政府がフリーターの見方を変えた

 小泉内閣メールマガジンで、厚生労働大臣が次のようなフリーターの容認発言をしていました。

 雇用が少ないだけの理由でフリーターが増えている訳ではなく、若人の職に対する考え方、形式よりも充実感を選択する生き方の変化を考える必要があります。彼らの将来に応える雇用を提供しなければなりません。

 これまでの政府の立場は、どちらかといえば、「フリーターは十分な税金を納めてくれないし、老後も不安で結局政府が面倒を見ることになるかもしれないから、実にけしからん」というものだったように思います。


フリーターの増加と需要の拡大

 しかし、フリーターというのは、雇う企業の側から見れば、正社員に比べてきわめて安い賃金で、しかも需要に応じて雇用と解雇のできる、実に「オイシイ」存在なのです。いまやフリーター人口は200万人といわれ、日本経済に欠かせない存在だといえるでしょう。

 そもそも、経済、技術、流行が驚異的な速さで移り変わるこの時代に、企業にとって流動的な労働力となるフリーターやパートタイマーの価値はきわめて高いといえます。また、個性や生き方が多様化し、一方で企業の安全神話が崩れたいま、個人にとってもひとつの企業に一生を捧げることにこだわりはなくなっています。こうした時代の流れに逆らえないことを、そして、フリーターの増大は決して若者の社会的倫理だけの問題ではないことを、ようやく政府は認めざるを得なくなった、というところでしょうか。

 確かに、「やりたいこともないからとりあえずフリーターでもやるか」といったタイプのフリーターは、わたしたちがこれまで培ってきた社会的倫理観からは容認できないものかもしれません。しかし、いまの日本にはそんな彼らでも十分に生きていけるだけの仕事があるのです。逆に言えば、彼らに対する需要があることも、わたしたちはよく認識しなければなりません。


フリーターという「階級」

 いま、わたしたちは彼らフリーターをひとくくりにして、ダメな人間、もしくは、オイシイ労働者として見ています。しかし、フリーターにもいろいろな種類がいます。正社員という肩書きがないだけで、正社員と同じ仕事をこなし、年中働きながら、低賃金に甘んじているひともいます。企業にとっては「いつやめられるかわからない」などを低賃金の理由として挙げるかもしれませんが、実際はその逆で、企業にとってフリーターは、いつでも減らせるというメリットを持つ低賃金の労働力なのです。

 先に述べたように、フリーターをはじめとする流動的な労働力は、日本経済にとって欠かすことのできない存在です。しかし、その需要の割に、彼らの雇用環境はあまりに悪い。これは、彼らの労働の成果の一部が、正社員たちに高い給料を与えるために回されているからではないでしょうか。やや極端な言い方になりますが、わたしたちは、フリーターという便利な言葉で彼らをひとくくりにすることによって、この構造的な階級社会を容認してはいないでしょうか。


固定的労働力と流動的労働力

 なにより、このままフリーターが増加を続けると、税金を納めてくれるひとがどんどん減っていくおそれがあります。正社員が納めた税金でフリーターが公共サービスを受ける、という二極化を認めてはなりません。せめて、労働に見合った税金を払えるだけの賃金をフリーターにも稼いでもらおうではありませんか。そのためには、正社員とフリーターという階級的な見方をやめ、固定的労働力と流動的労働力という考えに立たなければいけません。

 流動的労働力には、アルバイトやパートタイム、派遣・契約社員、転職市場など、さまざまな労働を含むことができます。仕事の専門性や熟練性などの差こそあれ、彼らこそ、いまと将来のダイナミックな経済を担う、大切な労働力なのではないでしょうか。



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